第2章 右目を追う
伊達軍の連中も、政宗から漂う怒りのオーラに顔を見合わせている。
それに引き替え、長曾我部軍の面々は、紫乃のことに興味津々の様子だ。
「アニキ! そのお嬢ちゃん、もしかして富獄で会った子じゃねぇっすか!?」
「なになに? アニキの女!?」
「初耳っすよアニキ!」
長曾我部軍の囃し立てる声に、政宗の機嫌はさらに悪くなっていく。
そこへ、元親は挑発的に答えた。
「・・・俺の女っつーのはちいとばかり早合点だが・・・まあ、一晩語り明かした仲よぉ。なぁ、紫乃?」
「も、元親、なんだか誤解を招く言い方はよしてくれっ・・・」
背後から睨みつける政宗の視線に耐えきれず、紫乃は自分の口で弁解を始めた。
「あ、あの、政宗殿。この男は西海の鬼・長曾我部元親だ。知っているだろう。
それでその、元親とはただの友達だ! 一晩共にいただけで、それから今まで久しく会っていなかった。
でも安心しろ! 元親はいい男だぞ!
断じて敵ではない!」
キラキラと目をかがやかせてそう言った紫乃に、さすがにまずいと思ったのであろう佐間助は焦って口を挟んだ。
「あ、あはは~・・・なるほどな、紫乃、あれだろ?そちらさんとはただの友達で、いい男っつーのはその・・・ただ強いっつー意味なんだよな?」
「・・・いや? もちろん元親は強いが、それだけじゃないぞ! 懐の深い、男気あるいい男だ!
私が保証する!」
伊達軍の誰もが、あちゃ─・・・と頭を抱えた。