第2章 右目を追う
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キイィィィン─・・・
歓声が止み、緊張感の走る二人の大将の間に、鋭い刃音が響いた。
政宗と刀と元親の錨。
二つの獲物が重なりあった部分に、もう1つの刀が交わっていた。
──紫乃の刀が、二人の間に割って入ったのだ。
元親はすぐに反応した。
「紫乃っ・・・!? 紫乃じゃねぇか!」
「私を覚えているのか!?」
嬉しそうに涙目で元親に話しかける紫乃に、政宗は眉を寄せて刀を離した。
「・・・おい紫乃、テメェの知り合いか?」
そう尋ねた政宗は、おそらくこのときはまだ怒ってはいなかった。
しかし・・・
「元親ぁ! 生きていたのだな!? 死んだと知らせが入ったときは、私はもう、もうっ・・・」
紫乃は周りのことなど忘れ、感動に任せ、元親の首に手を回して抱きついたのである。
「おおっと・・・、こりゃ甦った甲斐があったぜ。紫乃みてぇな可愛い嬢ちゃんに抱きついて出迎えてもらえるとはな」
元親も、正面から抱きついてきた紫乃の腰に腕を回し、ひょいっと持ち上げた。
「からかうな元親! 本当に、本当に良かったっ・・・もう会えないかとっ・・・」
涙でぐちゃぐちゃになった顔を元親の胸に埋めると、さすがに照れ臭くなったのか、元親は紫乃をおろし、両手を上げて苦笑いしている。
──すると、ついに機嫌の悪さがピークに達した男が、紫乃の首根っこを掴んで、元親からひっぺがした。
前髪の影に隠れている眼光は、鋭く光っている。
「・・・シカトこいてんじゃねえぞ・・・テメェ」
「・・・政宗殿?」
我にかえった紫乃の額からは、たらーっと汗がひとすじ流れ落ちた。