• テキストサイズ

【戦国BASARA】*月夜の盃 2*【R18】

第2章 右目を追う





── 一体何が起こっていたのかというと。

伊達政宗の一行と対峙した長曾我部元親は、その馬を奪わんと喧嘩をふっかけていたのである。


「悪いがその馬、ちょいと置いてってもらうぜ」


大きな錨を背に背負い威嚇すると、背後の長曾我部の軍勢が囃し立て始める。


「うちの兄貴に逆らわねえほうが身のためだぜ兄さん!」
「今のうちに馬ぁ置いてずらかりな!」


ギャーギャーと騒がしく怒号が飛び交う中で、伊達軍も負けじと、政宗の背後から応戦し始める。


「てめぇら筆頭に向かって何言ってんだ!」
「山賊ごときが筆頭とやり合おうなんざ馬鹿言ってんじゃねぇぜ!!」


随分と荒っぽい二つの軍が言い合っている様子に、大将の二人は睨み合いながらニヤリと笑っていた。


「活きの良い野郎どもを連れてるじゃねぇか、兄さん」

「アンタんとこのも、喧しくて飽きねえ連中じゃねえか」


政宗は刀を、元親は錨を、体の前で構えた。

囃し立てられた土俵で、二人はぶつかり合うタイミングを計り始める。

お互いの獲物が、カチャリと音を立てた瞬間、二人は走りだし、ぶつかり合った。


「俺は山賊じゃねえ! 海賊よぉ!」

「ハッ、山ん中に現れといて、てんで実感湧かねえなぁ!」


キンッ、キンッ。

獲物は何度も何度もぶつかり合い、その度に両軍の歓声は強まっていく。

大振りのどっしりとした元親の錨を政宗は細い刀で受け止め、それを押し返す。

元親もその隙を狙い、拳を使って殴りかかった。


──両者一歩もひかない、互角のやりあいが続いた。

両軍はざわつき始める。

己の大将に敵うものなどありはしない。
少なくともそれはこんな山中に偶然現れることなんてない。

そう思っていたのに、大将と互角にやりあう相手に、だんだんと歓声は止み、相手が誰なのかという正体の暴き合いへと発展していった。


「六爪に、青の陣羽織・・・まさか・・・」
「でけぇ体に、錨の獲物・・・まさか・・・」


両軍が、双方の大将の正体に気づきかけたとき。



「元親ぁ!!!」


紫乃が飛び出してきたのだった。


/ 152ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp