第2章 右目を追う
「・・・元親は・・・長曾我部の最後は、どうでしたか」
「最後まで鬼の尊厳を持ち続けた。要塞を渡すくらいなら、破壊して己と沈んだ方がマシだと思ったんだろうね。・・・西海の鬼とは顔見知り?」
「はい、以前、織田討伐の際に・・・。」
「・・・最後まで、潔い大将だったよ。あの鬼の旦那は」
誰かが天下をとろうとすることは、なぜこうも辛いことばかり起きるのだろう。
誰もが笑って暮らせる平和な世、以前慶次が言っていたそんな世が、この先に本当にあるのだろうか。
「・・・ありがとうございます、佐助様」
佐助様はその後すぐに大阪へと向かっていったけれど、私は思いもしなかった元親の死という事実にその場から動けずにいた。
奴と過ごしたのはほんの一時だったが、大切な友だった。
やがてあたりが暗くなってきたころ、やっと馬の蹄の足跡を追いながら伊達を追いかけた。
「・・・ん?」
すぐに異変に気づいた。
休んでいる伊達の一行に追いつき、茂みの先の山野にその姿が見えてきた。
──しかし、何か揉めている。
暗くて遠目ではよく見えないが伊達とは別の軍勢と対峙しているようで、政宗殿はその頭の男と言い争っている。
相手は山賊か・・・?
隠れながらじりじりと距離を詰めて様子をうかがっていると、やがて二人の刃を交えての喧嘩が始まっていた。
───なんだあの山賊の男、政宗殿と互角にやりあっている・・・?
よく目を凝らして、その男をじっと見た。
白銀の髪に、鬼のような大きな体。
獲物は船の錨。
・・・え・・・
嘘だ、まさかっ・・・・
「元親!?」
気づけば二人の間に割って入り、その名前を呼んでいた。