第2章 右目を追う
「まあ、お館様に伊達につくって啖呵切った手前、旦那がどうしてるか聞きにくいだろうからさ。こうして俺が伝えにきたってわけ」
「佐助様・・・」
「今入ってる情報は三つ。まずは豊臣の動きだけど、まだ大阪に留まってる。これから俺が大阪へ行って軍の進路を見てくるけど、お館様は、豊臣は関東殲滅のために小田原に拠点を移す可能性もあると見てる」
「そうですか・・・。」
「二つ目。うちの旦那は薩摩に向かってるが、ちょいと遅れてる。旦那が他のいざこざに首を突っ込みすぎてるからね。騎馬隊の数も半分に減らした」
「えっ・・・」
そんな・・・。
途中まで幸村様に同行していた佐助様だけれど、苛立ちを隠せない様子だ。
幸村様の立ち回りはうまくいっていないのだろう。
それが佐助様を苛立たせている。
・・・幸村様・・・。
「・・・幸村様は、お怪我なく無事でおられますか?」
「まあね。でもお館様は旦那に全部任せちまってるから、これからは旦那が何とかしないといけない」
「そうですか・・・。でも、幸村様がそこまで加勢するべき戦が、西であったのですか?」
「そう、それが三つ目。西の長曾我部が豊臣に落とされた」
えっ・・・
「長曾我部!?」
「でかい要塞ごと、主将の長曾我部元親も海に沈んでいったよ。うちの旦那が加勢しても向こうは毛利との連合軍だったからね。勝ち目はなかった」
嘘だ・・・
そんな・・・
─『お前さんの想う男に代わって、今送り出すわけにはいかねぇぜ。』─
元親っ・・・
あの元親が、死んだ・・・?
顔を青くさせている私に佐助様は怪訝な顔を向けるけれど、取り繕う余裕はなかった。
忘れもしない、元親のあの優しげな顔が蘇ってくる。