第2章 右目を追う
「紫乃よ。己の感じたことに従い、それを正と信ずる。ときに主君に逆らってでも、信じる者を守る。・・・それこそ、わしがお主に期待しておった働きじゃ」
「・・・お館様・・・」
「独眼竜の勝機は、紫乃、お主なのであろう。無償の信頼を向ける味方がいること、大将にとってそれほど強固な守りはない。
・・・紫乃。よくぞそれを成した」
人取橋で謙信殿にも似たようなことを言われた。
・・・そうか、私は間違っていなかった。
政宗殿を信じることこそ、私の役目だったのだ。
「オッサン。じゃじゃ馬がつけ上がっちまうからその辺にしときな」
「なっ・・・政宗殿! つけ上がってなどおらぬ!」
「言っとくがオッサンの言うような大層なモンじゃねえ。コイツは俺のモンだから側に置いてる。それだけだ」
「なっ・・・ま、ま、政宗殿っ! いい加減にしないか! お館様の前でっ・・・!」
言い合う私たちを見て、お館様はもっと笑っていた。
佐助様も苦笑いをしている。
ああ、なんて恥ずかしい・・・。
ここに幸村様がいなくて良かった。
幸村様には、こんなことで顔を赤くしている私を見せたくない。
・・・・幸村様は、どうしているのだろうか。