第2章 右目を追う
「・・・紫乃、それはなぜじゃ?」
「確かに一軍にて豊臣に挑むことに策などありません。お館様の仰る防衛線に加わることは、勝機を高める一手なのでしょう。
・・・しかし、伊達は今、片倉殿を取り返さねばなりません。回り道をすることなど、政宗殿には無理な相談にございます」
「お主はそれで良いと思うておるのか?」
「・・・良いか悪いか、それは分かりません。でも、私は今、ここにいるのです。伊達の中にあるのです。・・・ご無礼は承知の上。それでも、ここは伊達の流儀に従わせていただきたい」
私は、顔を上げてお館様のお顔を見ることはできなかった。
・・・武田を追い出されるだろうか。
お館様にこんなに堂々と反対してしまった。
すると肩を落とした私の頭を、後ろにいた政宗殿はワシャワシャと撫で回してきた。
「分かったろ甲斐のオッサン。アンタら、ちょいとコイツを俺に預けすぎたみてぇだぜ。俺たちがしなきゃならねぇことは、俺たちが一番よく分かってる。
コイツにもな。それだけだ」
政宗殿・・・。
すると・・・
「ふははははは!!!」
お館様は、声を上げて笑い始めた。
「お館様・・・?」
「立派になったのう、紫乃」
「え・・・?」
お館様は、政宗殿から奪い取るように、対抗して私の頭をガシガシとなで始めた。