第2章 右目を追う
「そなたの役目は伊達政宗を支えること。それは彼の心に寄り添い、共に戦うこと。・・・紫乃は、何も間違ったことなどしていないでしょう」
「謙信殿・・・」
「紫乃の思う通りにすればいいのです。独眼竜のことを一番理解しているのですから。彼の心に寄り添い感じたこと、それに従うことが正しいのです。
・・・その上で、私が必要だと思ったことを手助けさせてもらったまで」
謙信殿・・・。
そう言ってもらえると、救われる。
何もできないと思っていたけれど、こうして政宗殿のそばにいるだけで役目を果たせていると言ってくれた。
「紫乃。ちょっと耳を貸してくれますか?」
「え? ・・・えっ!?」
謙信殿が私の腰に手を伸ばしてきたかと思うと、そのまま馬の上に抱き上げられた。
ストンと彼の前に横向きに座らされる。
いきなりのことに驚いたが、向こうに見えているかすが殿がものすごい顔で見ていることに気づくと、私は慌てて馬の上で距離をとった。
「け、けけけ謙信殿どうしたのですかっ! かすが殿が見ています!」
「ふふ、それを言うなら、私からは鬼のような竜の顔が見えていますよ」
ふざけている場合ではない。
こんなの、かすが殿に殺されかねない。