第2章 右目を追う
──上杉軍が退却していく・・・
私はやっと気づいた。
政宗殿、そして伊達の兵たちの傷を癒す時間。
そして体制を整え冷静になるための時間。
謙信殿は、ここで私たちを足止めしてそれを下さったのだ。
──それは本来なら私がやるべきだったこと。
感情を優先させてしまい役目を果たせなかった私の代わりに、こうして力を貸して下さった。
上杉軍が後退していくにつれ、次第に中に混じっていた謙信殿の姿も見えてきた。
隣にはかすが殿の姿もある。
「謙信殿っ!」
礼をしなくては。
お館様と同じく、私を心配してくれて、そして政宗殿の可能性を見いだしている。
信頼している武将の一人。
──私が人取橋の上へとかけていくと、白馬に乗った謙信殿もそこまで迎えてくれた。
「久しぶりですね、紫乃」
「謙信殿、こうして私たちに時間を作ってくださったこと、恩に着ます。・・・本当は、本当は私が伊達を引き止めるべきだったのですが・・・面目ないっ・・・」
「いいえ。紫乃はそれでいいのです」
「え・・・?」
謙信殿は優しげな笑顔を向ける。