第2章 右目を追う
「Are you ready guys!?」
「Yeah!!」
──伊達軍は明朝すぐ、政宗殿を先頭に奥州を発った。
私はいつも片倉殿が走っていたはずの政宗殿の斜め後ろ側に馬をつけて走る。
「おい紫乃、返事はどうした!」
「あ、ああっ・・・」
今朝から、政宗殿の顔がまともに見られない。
昨日は不覚にもまた奴の口づけに酔ってしまったのだ。
あんな不埒なことに付き合っていたら、また身を滅ぼしかねない。
──おそらく、私はこうして大阪に発つことに反対すべきだった立場のはずだ。
傷の癒えない兵たちと、伊達一軍のみで大阪へ行くことは無謀。
もしかしたらお館様は、また伊達と上杉軍とともに、関東の兵を一時共闘としたいとお考えだったかもしれない。
そしてそれは伊達との橋渡しとなる私の存在をあてにしているはず。
だからお館様のことを考えるならば、ここで政宗殿を引き止め包囲網に加えることに尽力すべき立場だった。
──でも私にはできぬのだ。
政宗殿とともに、今すぐにでも片倉殿を取り戻しに行きたい。
その気持ちは政宗殿と同じくらいに大きくなっている。