第1章 再会の意味
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芦名の兵を殲滅したころには、伊達は多くの兵を失っていた。
生き延びた兵たちはもはや気力で起き上がることが精一杯。
私とてそうだ。
政宗殿が先陣をきってほとんどの兵を倒してしまったものの、私たちもこんなにも長い時間、戦わなければならなかった。
「・・・政宗殿・・・」
「よぉ紫乃。テメェらも。よく生き残ったじゃねーか」
代償は大きかったが、なんとかこの奥州の地は守りきった。
─────ところが、予想外だった。
カシャン、カシャンと近づいてくる足音。
敵の勢力は殲滅し、静かなはずのこの摺上原。
現れるはずないと思っていた人物が現れたのだ。
「豊臣、秀吉っ・・・!?」
その強固な体と、意思の強い目。
鋼のような鎧をまとう豊臣秀吉。
それが砂嵐の吹き荒れる摺上原を、ゆっくりとこちらへ進んでくる。
こうして目の前にすると、どこに斬りかかるべきなのか、どこにも隙などなかった。
「・・・山猿の大将のお出ましか。こっちからぶっ倒しに行く手間が省けたぜ」
・・・そうは言っても、政宗殿も息が上がっている。
今この期に豊臣秀吉が直々に来ること、それは言葉とは裏腹に望まぬ展開だったはずだ。
「小蛇が。口だけは達者なようだな」
「テメェこそ、腰巾着に全部任した割りには、いてもたっても居られなくてここまで来ちまったくせに何言ってやがる」
「・・・身の程を知れ」
「やってみやがれ、猿野郎!」
政宗殿は六爪を抜いた。
立ち向かっていく目は、竜の目だった。
だからこのときは私も、政宗殿を信じていたんだ。
彼が倒れることなど、決してないと。
──豊臣秀吉の前で政宗殿が崩れ落ちる、その瞬間までは。