第4章 雪どけの朝
──伊達軍も集まって武装し、城へ迫る武田軍の前に立ちはだかった。
武田軍は、お館を先頭に、幸村様や佐助様もそこにいた。
里とは反対方向からやってきたものの、もう城のすぐ目の前に来ている。
お館様の前に立つことが怖くて仕方なかったが、私だけ隠れて震えているわけにはいかず、政宗殿の隣に立った。
私を見て、お館様は・・・
「紫乃よ。あれがお主のけじめの付け方だというのか。甲斐を去り、わしらを裏切る、と」
「っ・・・お館様・・・」
「随分と浅はかな考えじゃ」
体を貫かれるような、お館様の冷たいお言葉。
側にいる幸村様は「しかし、お館様」と庇ってくれるが、お館様は厳しい表情を変えようとはしなかった。
「・・・申し訳ございません。しかしこれが、私の出した答えなのです」
私が一人で立ち向かっていると、政宗殿は、肩を抱いてくれた。
「分かったろ? 甲斐のオッサン。コイツはもう俺のモンだ」
「いや。独眼竜。お主にはやらんぞ。紫乃は武田のものじゃ。」
「あぁ? 頭の固いオッサンだな。やるってのか?」
──政宗殿は、刀に手をかけた。
「・・・紫乃よ。お主は勘違いをしておる。なぜ独眼竜と結ばれることが、わしらへの裏切りとなると思うのじゃ」
「・・・え?」
お館様の言葉に、政宗殿は刀の柄を握っていた手をおろした。
「愛する者のそばにいる、若いお主がそれを望むことは、当たり前のこと。よもやわしが、それを許さぬと思うたか」
「い、いえ、しかし・・・今は戦国の世。誰もがそういう気持ちを押し殺し、戦い、のしあがる世でございます。・・・私だけが、こんな勝手を許されるのかと・・・」
「ならば変えればよい。その世を。お主らで」