第4章 雪どけの朝
政宗殿は一瞬固まって、床に猪口を置いた。
寒いのは本当だ。
どうしようもなく寒いから、政宗殿に触れてもらえば体の熱が上昇し、温かくなるから、だから都合がいいのだ、と。
そんなどうしようもない言い訳を思い付いたが、口にすることはなかった。
「・・・紫乃・・・」
「・・ん・・」
酒の味がする口づけ。
潤った口内に、さらにお互いの味が、熱とともに広がっていく。
甲斐を捨てた私にはもう、これを拒む理由がなくなってしまった。
「・・・ん・・」
「・・・口開けろ」
「あ・・・んん・・・ 」
政宗殿は私の冷えた体を抱き寄せて、舌を重ねた。
舌が重なり合うたび、静かな室内に響く水音に、私たちは止まらなくなった。
「ん・・・」
いつものように、抵抗などする気にはならなかった。
こうしているだけで、気持ちいい。
抱き締められて、彼の着流しがサラサラと触れるのも、舌を遊ばれるのも、彼と酒の匂いに包まれるのも、全てが、心地いいのだ。
「政宗殿っ・・・」
「ハァッ・・・オイ紫乃、悪いが、今からお前を抱くぜ。もう一秒たりとも待ってやれねぇ・・・」
「っ・・・」
彼の手が、私の腰紐を解いた。
はらりと着物は脱げ落ちて、露になったこの胸に、顔を埋めてきた。