第4章 雪どけの朝
──しかし、いつまでもこうしていてはダメだ。
政宗殿の元に、ちゃんと戻らなければ。
屋根裏から襖の前の廊下へストンと降りると、その襖に向かって細い声で呼び掛けた。
「・・・政宗殿」
呼び掛けた瞬間、中にいる政宗殿が腰を上げ、こちらへ来ている気配が伝わってくる。
私は、前にここへ来たときはこの襖を開けられなかったのたが、今度はこちらから、襖を開けた。
「・・・戻ってきたぞ、政宗殿。待たせてしまったか?」
「・・・フッ、お前にしちゃ、随分と早い方だぜ」
紺の着流し姿の政宗殿は、いつも以上に麗しく見えた。
襟元が緩く、帯も引っ張ればすぐに解けてしまいそうで、私はなぜか、自分の帯の方をしっかりと締めた。
私は中に入り、襖を閉めた。
「・・・政宗殿」
「なんだ」
「甲斐から祝いの酒を持ってきた。豊臣を討ち果たした祝いだ。・・・一献」
「・・・気が利くじゃねえか」
政宗殿は片倉殿とよくここで酒を飲むのか、用意せずとも、二人分の猪口が備えられていた。
それをひとつ政宗殿に持たせ、徳利に入った酒注いでいった。
鼻をつくような酒の匂いがする。
注ぎ終わると、政宗殿は私から徳利を奪い、その注ぎ口を私の方に向けた。
「え・・・?」
「お前も飲め」
「あ、いや、自分で・・・」
「いいから寄越せ」