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【戦国BASARA】*月夜の盃 2*【R18】

第4章 雪どけの朝




───お館様へ───


『この度の日ノ本全土に及ぶ戦にて、改めて武田の強さを知ることとなった今日、紫乃は武田に生まれ育ったことを誇り、そして嬉しく思っております。

中でも、幸村様のご活躍、そして冷静沈着なお館様の変わらぬ強さ、それがこの身に滲みているのです。

しかしこの度、こうして筆を取ることとなりましたのは、その尊敬の念とは矛盾する自分の心を、懺悔せねばならないからです。


私は織田討伐のときから先日の豊臣との総力戦にかけまして、奥州の伊達政宗殿と行動を共にしてまいりました。

それはお館様に命じられたことでございましたが、それを最初は不服に思うこともあったのです。

しかし政宗殿の側で彼を見ているうちに、その力は、武田の宿敵でありながら、共に日ノ本を守る力となり得ると、やはりお館様の読み筋が正しいものであったと実感致しました。

お館様の認める他国の将、その側に従えることは、私にとって、武田に仕えることと同じくらいに誇らしくなっていきました。


しかし、これは自分でも意図しなかったことでございますが、実は私は、伊達政宗殿に、いつしかそれ以上の感情を抱くようになってしまいました。


このことは、武田に背くことであり、私に対するお館様のご期待、信頼、そして今まで下さった深い愛情、その全てを裏切ることであると、理解しております。

そう何度も、何度も自分に言い聞かせて参りました。

しかし、何度も試みたのですが、とても自分では律することができぬほどに、彼のことを愛するようになってしまったのでございます。


自分の罪深さに、失望しております。

このことを誰よりも悔しく受け止めているのは私です。

この文で、再度武田に忠誠を誓うこともできますが、私にはそれはできません。


こんな自分が悔しく、失望しているのに、それでも信じられぬことに私は、政宗殿への愛情を見出だしたことに感激してしまっているのです。

自分がこんなに誰かを愛することができるのだと、その喜びを捨てることが、どうしてもできぬのです。


武田の全てを愛しく思っておりました。

しかし、私は、政宗殿への愛情を、どうしたって手離すことができません。

こんな私をどうかお許しください。


紫乃より』


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