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【戦国BASARA】*月夜の盃 2*【R18】

第4章 雪どけの朝



幸村様の魅力だって、私にはよく分かるのだ。

少なくとも、政宗殿はここで、こんな風に、幸村様のような言葉は言えぬはず。

相手の気持ちを汲んで、自身の弱点を言葉にする優しさ、それは幸村様だから持ち合わせているもの。


でも、幸村様が言ったとおりなのだ。

私が好きになってしまったのは、政宗殿なのだ。


「・・・ありがとう。幸村様」


私は笑顔をつくった。

彼の優しさに対する、精一杯の誠意を込めて。


「ときに紫乃。お館様には何と報告を?」

「・・・いえ、まだ・・・」


幸村様はひとくぎりつけ、今度は神妙に身の振り方について話を始めた。

お館様は幸村様とは違い、武田の兵を束ねる立場にあるお方であり、情のみで判断することを許されているわけではないはずだ。

私が自身の気持ちを明確にすれば、他の兵との折り合いや、今後の伊達との関係を踏まえた上で判断されるはず。

しかし、私の方は、答えが出てしまっている。

──政宗殿のそばにいたい。


私は幸村様から少し離れ、その優しい顔に、自らを律し、熱のない視線を向けた。


「・・・お館様や、武田の皆には、何も告げずに行こうと思います。」

「紫乃?」

「幸村様が認めて下さっても、私は武田にとっては裏切り者。よく考えれば、それを理解してもらおうとお館様に許しを乞うなど、都合が良すぎると思うのです」

「そんなことはござらぬ! お館様とて、紫乃の心を理解して下さるはず! 何も告げずに出ていくなどとっ・・・」

「・・・いつまでも甘えることはできません。私の方から先に、区切りをつけなければ」


なぜなら、お館様に行くなと言われたとしても、私は奥州へ行くからだ。

ならばそれを告げる意味などない。

──でも、今までずっと、武田とともに生きてきた。

私の大切な故郷。


「・・・ですから、幸村様。最後にひとつだけ、お願いしたいことがございます」

「・・・お願い、でござるか?」

「お館様に、文を書きます。・・・それを、渡してくださいますか」


幸村様はすべてを納得した様子ではなかったが、最低限、文を書く、ということにひとまず頷いてくれた。

今まで、文を書くことは、滅多になかった。

墨と、硯と、筆を持って、誰にも見つからない部屋へと籠り、私は思いのかぎりを文に綴った。

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