第4章 雪どけの朝
どれくらいそうしていただろうか。
流れきった涙は、やがて乾いていった。
幸村様は、私の肩に置いている手を、ポン、ポン、と優しく動かし始めた。
「某は、なんとなく分かるのだ」
「え・・・?」
眠ってしまいそうになるほど心地よい、優しい肩の振動に、つい意識がぼやけてしまったが、そんな私に、幸村様は語りかけた。
「某にとって、政宗殿は、特別な存在でござる」
幸村様は、どこか遠くを見ている。
「・・・特別な存在?」
「某には今まで、真に戦いたい相手などいなかった。お館様の背中を追いかけて、そこで出会った兵たちを倒し、道を開いて来たのみ。・・・しかし、政宗殿は違うのだ。某が心から超えたい壁であり、真に刃を交えたい相手であり、将来、この戦国の世を共に担うべき友。そんな存在なのでござる」
「幸村様・・・」
「共に育ち、励み、紫乃とはその目に同じものを映して暮らしてきた。某と紫乃は、似ているのでござる。・・・なれば、紫乃が政宗殿に惹かれた気持ちは、某にもよく分かるのだ」
幸村様は、きっとお辛いはずだ。
政宗殿の魅力を認めること、それを言葉にすること。
私のために、それをして下さった。
私の気持ちを受け止めて、それを応援するために。