第4章 雪どけの朝
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私は幸村様とともに、武道に励んだ部屋へとやって来た。
幸村様が、ここで話をしたいから、場所を移そうと言ったのだ。
二人並んで、壁に背を預けて座った。
二人きりで、懐かしいことばかりを思い出すこの部屋で、私は自分の正直な気持ちを話さねばならない。
この部屋で積み上げてきた私たちの絆を、なかったことになどしたくない。
しかし、幸村様の想いを受け止められないということ、それが私の、考えた末の答えなのだ。
「紫乃、政宗殿の様子はどうであった?」
「・・・怪我などもなく、特に変わりありませんでした」
「それは何よりでござる。・・・良かったな、紫乃」
「・・・幸村様・・・」
「紫乃。何も怖れることはござらぬ。紫乃の出した答えがどんなものでも、今まで二人でここで鍛練を積んだ日々が消えるわけではない。・・・某は、それだけで、十分でござる」
・・・幸村様・・・
「・・・ごめんなさいっ・・・幸村様・・・」
幸村様は、そっと指で私の涙を拭うと、肩に手を回し、私をその胸に引き寄せた。
温かい胸に、私は顔を埋めて、しばらく泣いていた。