第4章 雪どけの朝
途端に、怖くなった。
近くに感じていた幸村様は、私が甲斐を離れると決めた今日からは、もう遠い存在になってしまう。
いや、それどころか、まさか、今日が幸村様のお姿を拝見する、最後の日になりはしないだろうか。
裏切り者の私が勘当され、拒絶されてしまったら、そうなってしまうのではないだろうか。
「・・・幸村様、私・・・」
『会ってきたのでござろう?・・・政宗殿に』
「・・・っ・・・」
『・・・紫乃』
襖が開いた。
「・・・幸村様・・・」
「おかえり」と、悲しそうに笑う、幸村様がそこにはいた。
その顔を見ただけで、泣きそうになった。
幸村様は、もう、全て分かっていらっしゃるのだ。