第3章 幸村の想い
「・・・政宗殿・・・」
思えば、彼にこうして抱き締めてもらうのは、あまりないことだったかもしれない。
私たちはいつも戦いの中で、助け、励まし、そして求めあってきた。
でもそれは、政宗殿が、私の心の中を、体を使って探ろうとしていた行為であり、こうして彼が、私の剥き出しの気持ちを受け止めるのは、これが初めてだ。
その手は、とても優しい。
「紫乃・・・」
空気はこんなにも冷たいのに、互いの熱が伝わりあい、どんどん上昇していく。
もう、何もいらない。
この熱があれば、私は・・・
──そう思っても、また、幸村様の顔が浮かぶのだ。
「政宗殿。・・・甲斐へ戻る」
「・・・何?」
「・・・幸村様と、話さねばならない」
私が政宗殿を選ぶこと。
幸村様や、お館様、武田の皆。
それらを全て捨てて、政宗殿を選ぶこと。