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【戦国BASARA】*月夜の盃 2*【R18】

第3章 幸村の想い




「ま、政宗殿、私は決して、お前に会いにきたわけではない・・・」


目を合わさぬまま、そう呟くだけで精一杯であった。


「ここまで来といて何言ってんだ」

「本当だ。孫兵衛たちにここに縛られなければ、まっすぐ甲斐へと戻っていたはずだったのだ。・・・幸村様のもとへ」

「・・・チッ」


幸村様の名前を出した途端、政宗殿は分かりやすく眉をひそめた。

それはおそらく、私がその名前を出すと同時に赤面したからである。


私は籠手から仕込み刃を出すと、それで体をぐるぐる巻きにしていた縄を切り始めた。

すぐに切れて、シュルリと足下に縄が落ちる。


「・・・政宗殿。豊臣を滅したこと、佐助様よりお聞きした。・・・この戦をお前と共に戦えたこと、誇らしく思っている。いや、政宗殿ならきっと日の本を救うと信じていた」

「フン、だったら、これからも信じて付いて来い。簡単なことじゃねーか」

「簡単なことではない。少なくとも、私にとっては。とてもできぬことだ」

「何ぃ?」


政宗殿は距離を詰めると、私を、先程までくくりつけられていた木に背がつくまで追いやってきた。



「・・・テメェ、真田幸村に何か言われたのか?」


──っ・・・


「フン、図星みてぇだな」


言い当ててきた政宗殿から、すぐに顔を背けた。

しかし彼はそれを許さず、私の顎をがっしりと掴みあげ、自分のほうへと向けた。


「政宗殿っ・・・」

「今さら俺が、テメェを手離すと思ってんのか?」

「ま、待てっ・・・!」


このまま無理矢理口づけをされることは、今まで何度もあったのだが、今の私はそれを受け入れることはできなかった。

幸村様を裏切ることはできない。

答えを急がなくていい、そう言って下さった幸村様のお気持ちに応えぬまま、ここで政宗殿の口づけを受けることは許されない。


「やめろっ・・・!」


全身全霊の力を集め、やっと政宗殿の腕を振り払うことができた。

私の顎をがっしりと固定し掴みあげていた彼の手は、振り払った瞬間宙を舞い、行き場をなくした。

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