第3章 幸村の想い
「久しぶりじゃねーか、紫乃」
「政宗殿・・・」
─ドクン─
幾日かぶりに会う政宗殿は、最後に見た勇ましい鎧姿ではなく、凛とした袴姿だった。
共に豊臣を追った戦いでは鎧姿ばかりを見ていたが、この城にいるときの袴姿の彼は、女である私よりも艶があり、色っぽく感じられた。
そんな彼が、くくりつけられて動けぬ私の視界の端から、徐々に近づいてくる。
顔が熱くなっていく。
顔を背けても、ザッ、ザッ、と砂を踏む足音が、もう、すぐそばにある。
「・・・おせーんだよ。俺をどれだけ待たせやがるんだ、テメェは」
艶やかな姿には似つかわしくない、勇ましく雑な声色。
それが耳の近くで発せられる。
突然のことに、縛られていることは関係なく動けなかった。
身は固くなり、彼の目を見ることもできない。