第3章 幸村の想い
騒ぎの起きている場所は、武田が領内を守るために兵が駐屯している矢倉だった。
私が駆けつけたときには、矢倉の一部が壊され、そこで見張りをしていた三人の兵が、他国の徒党と戦っている最中であった。
見るからにただの「小競り合い」だった。
徒党は確かに伊達軍の武装をしており、四人で矢倉を襲っている。
しかし、とても本気とは思えない。
ただちょっかいをかけているだけに見えた。
「おいお前ら! 何をしている! ここを武田の領地と知っての襲撃か!?」
まるで喧嘩の仲裁をするように、その輪の中に近づいていった。
すると驚いたことに、徒党は見知った四人組だったのだ。
「おう! 紫乃、ひさしぶりだな!」
文七郎、孫兵衛、佐間助、そして良直。
武田の矢倉を襲ったくせに、ケロッと私に挨拶をしてきた。
・・・何を考えてるんだ。
「ひさしぶり、じゃないだろう! これは何のマネだ!」
「騒ぎを起こせばお前が来ると思ったんだよ」
「はあ!?」
「紫乃、いつになったら筆頭に会いに来るんだ? 俺達、待ちくたびれて、こうしてお前を呼び出しちまったぜ」
いきなり友好的になった伊達の四人組に、武田の兵たちは迷惑そうにひと睨みすると、矢倉を立て直し始めた。
私はとりあえず、四人組といえど、いつまでも伊達軍を領地に居座らせるわけにもいかないので、私の方が伊達の領地へと移動することとなった。