第3章 幸村の想い
───そのころ、奥州では。
「おい小十郎」
「はい」
「今日で何日目だ」
「・・・10日、でございます」
政宗は、剣をふりながら白い息を吐き出すと、それはため息のように空に昇って消えていった。
紫乃と別れ、豊臣を討ち果たした。
しかし奥州に戻ってから、10日が経っても、紫乃は会いに来ないままなのだ。
「ちくしょう、あの女、マジで俺を怒らすのが趣味みてぇだな」
「・・・政宗様、そうお怒りにならずに。もうしばらく待ちましょう」
やけに落ち着いている小十郎の態度は、政宗の怒りに油を注いだ。
刀を鞘に収めると、縁側に正座している小十郎の前に立ち、腕を組んで睨み付けた。
小十郎は、相変わらず、落ち着いてその顔を見上げた。
「気に入らねえな。小十郎、お前、こうなることが分かってたんじゃねぇだろうな」
「こうなること、とは?」
「・・・アイツが甲斐に居着いちまってんだろ。いちいち説明させるんじゃねぇ」
ついこの間まで、政宗は、紫乃の想いに確信を持っており、戦が終わればすぐに彼女が自分のもとへ戻ってくることを疑っていなかった。
ところが、日が経つにつれ、彼の自信はじわじわと薄れていった。