第3章 幸村の想い
「まあでも、紫乃。この機会によく考えてみるといいよ。両方と良い関係でいることなんて、できないからね」
「佐助様・・・」
「旦那を選ぶなら、もう独眼竜のことは切り捨てなくちゃならない。反対に、独眼竜を選ぶなら、もう旦那のお付きにはなれないよ。お館様とも、旦那とも、もちろん俺とも。武田と今までどおりになんて許されない」
「っ・・・!」
そこは、私が恐ろしくて目を背けていた部分であった。
だからずっと、政宗殿の気持ちに応えず、曖昧にしてきた。
それは政宗殿と触れ合うたび、心のどこかでは感じていたのに、見てみぬフリを続けてきたのだ。
政宗殿の側にいるということはすなわち、武田から離れるということなのだ。
政宗殿は、いずれ幸村様と決着をつけることとなる。
政宗殿の側で、幸村様との戦いを目にしなければならなくなるのだ。
「・・・佐助様・・・私は・・」
「まあ、俺が言えるのはここまで。決めるのは紫乃だからね。自分がしたいようにするといい、後悔しないように」
「・・・はい」
佐助様はそれだけ言い残し、立ち上がって行ってしまった。
残された私は、空を見た。
冷たい風が、背をかするように吹いていた。
甲斐がこんなに寒くなったのだから、奥州はさぞや、刺すような寒さなのだろう。
少し離れている間に、景色は変わっていた。
もうすぐ冬だ。