第3章 幸村の想い
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「紫乃」
「・・・佐助様・・・」
縁側に座ってボーッと空を眺めていると、佐助様が隣に腰をおろした。
腑抜けた私の顔を、じっくりと覗きこんでくる。
「聞いてたよ、さっきの」
「えっ」
「旦那とのやりとり。まあ、俺はずっと知ってたんだけどね」
幸村様の名誉のために、先程のやりとりを他人に相談などする気はなかったが、佐助様は全てを見透かしている様子であった。
そしてやはり、佐助様は知っていたのだ。
確か政宗殿も前に、幸村様は私に惚れているようにしか見えない、などと言っていた。
気づかずにいたのは、私だけなのだろうか。
「で、どう思ったの?旦那に想いを告げられて」
「・・・どう、と、いいますか・・・」
「困っちゃった? まあ、今更、旦那のことそういう風には考えられないよね。何年も、そういうこと考えずに接してきたんだから」
「そんなことありません!」
私は、はっきりと否定した。
そのことに、佐助様はまるで予想外であったかのように、目を丸くして驚いていた。
「佐助様。私が先程、幸村様のお気持ちをお聞きしたとき・・・一番に感じたのは、嬉しいという気持ちでした」
「・・・え、え、そうなの?」
「私は決して、幸村様を主君として、ただそれだけで慕っていたわけではありません。・・・お優しいし、お強いし、男としての幸村様も、申し分ないじゃないですか。私だってずっとそう思っていました。幸村様と結ばれる人は、なんと幸せだろう、って。いつか私から離れていってしまうことを考えると、辛いですし、お相手の方が羨ましいと思ってしまいます。そんな幸村様が、本当はずっと私を想っていてくれたなんて、そんな、そんな嬉しいことはありません」
「紫乃・・・」
「幸村様のことを男として見ることはできない、なんて、決してそんなことありません」
「じゃあ、受け入れるの? 旦那の気持ち。独眼竜のことはどうするの?」
「・・・」
そこなのだ。
私がこんなにも頭を悩ませているのは。
幸村様はこんなにも素敵な人なのに、私が首を縦に振ることができずにいるのは、政宗殿のせいなのだ。
政宗殿を好きだと、自覚しているからだ。