第3章 幸村の想い
あまりの衝撃に、私は言葉が出なかった。
驚くこともできなかった。
ただ男らしい目で私を見つめる、幸村様のお顔を、口をぽっかり開けたまま見つめ返すことしかできなかった。
(幸村様が、私を・・・?)
「しかし、紫乃。分かっている。紫乃が政宗殿に想いを向けていること」
そこでやっと、私は顔を赤くしたのだと思う。
図星であるその事実を、幸村様に言われてしまったからだ。
「ゆ、幸村様・・・」
「しかし、某の気持ちは変わらぬ。紫乃への想いを消し去ることなどできぬのだ。・・・男として、政宗殿のところへは、戻ってほしくない」
「っ・・・」
そうはっきりと言葉にされたとき、私の中に、なんとも言えない感情が溢れてきた。
ずっとずっと、共に育ってきた幸村様。
幸村様は友であり、兄弟であり、今は主君なのだ。
その幸村様は、ずっと、ずっと、私を想っていたというのだ。
「幸村様・・・」
それは戸惑いの感情もあった。
しかし、そこにずっと気づかずにいた私の愚かさと、幸村様をずっと傷付けてきたのだという事実が、私を締め上げた。
政宗殿の顔は、一瞬浮かぶも、すぐに消えた。
幸村様の言葉が頭の中をかき回すようで、何も考えられなかった。
ただただ、何も知らずにいた自分の愚かさだけが、この胸を痛くしたのだ。