第3章 幸村の想い
「幸村様ぁあ──────!!!」
(・・・紫乃!?)
熱さに金切り声をあげていたものの、ついには意識を失いかけていた幸村だが、最後のわずかに残された意識でその声を聴いた。
声のする方に、紫乃の姿があったのだ。
彼女は涙を滲ませ、あんなにも取り乱し、声を張り上げることで幸村の死を阻もうとしていた。
その姿に、幸村は、自分の中に、この熱さ以上の燃えたぎるような感情が呼び戻されていくのを感じていった。
その感情は、どんなことをしてでも、命を懸けてでも、この日輪を止めねばならないということへの情熱。
そうしなければ、日ノ本を守れない。
武田との、信玄との、そして紫乃との明日は来ないのだ。
「うおおおおおおおおお!!! 熱い!! 燃える!!この身が、燃えたぎっているううう!!!」
日輪の熱さが、幸村の体の奥底の熱と融合していく。
目に見えて発火していくほどにその熱は上昇していったが、幸村の身は熱とともに強く強くたぎっていた。
「某は、某はここで朽ちゆくわけにはいかぬ! お館様のため、そして日ノ本のため!! 某のすべてのために、今ここで沈むことなく!!!」
「何!? 効かぬだと!? 貴様っ・・・」
幸村様は体から沸き起こる強大な力で、捕らわれていた日輪の反射鏡を粉砕した。
その力は伝染していくように、連なっている反射鏡を次々と割っていく。
「たかたが捨て駒一匹に、我がここまで追い詰められるなどと・・・我の計算には・・・」
毛利が逃げる術はなかった。
反射鏡がすべて割られ、灼熱の槍を持った幸村が、毛利の目前まで迫ってきているのだ。
毛利はただ、その槍が、己の体を吹き飛ばすのを、動かぬ足をじっと踏みしめて待つのみであった。
「毛利元就!! 覚悟おおおおおお!!!」
日輪のお立ち台に立ちすくんでいた毛利元就の体は、弧を描くようにそこから空を舞った。
そして深い深い海へと落ちていったのであった。