第3章 幸村の想い
優しくてお強い幸村様。
そんな幸村様だが、日ノ本を背負い、そしてお館様の追い求める明日を同じく見つめている今は、強靭な武将としての心、それをむき出しにしていた。
─『・・・某は、どうしたらいいのか分からぬっ・・・』─
─『・・・怖いのだ。』 ─
いつであっただろうか、お館様が目覚めぬとき、そうやって震えておられた幸村様を、私はお慰めしたことがあった。
私はそのお気持ちがよく分かって、安堵したことを覚えている。
怖れているのは私だけではなかったと、武田の窮地に震えているのは、幸村様も同じであったと。
そう思ったのだ。
・・・でも、幸村様はいつまでも私と同じところになど留まってはいなかったのだ。
どんどん先へ行かれているのだ。
ああ、幸村様のお側で、日ノ本の明日が見たい。
それが私の昔からの夢なのだ。
──政宗殿を好いていながら、その夢を捨てずにいることは許されるのだろうか。
何度も何度も、己の心の矛盾をこうして見つめて、その度に先送りをしてきた。
政宗殿のそばにいたい。
でも、幸村様とともに武田の明日を見たい。
どうしたらそれが、成せるのであろうか。