第3章 幸村の想い
武田の騎馬隊は日輪へと乗り込んでいき、その甲板から毛利元就の姿を見上げた。
名乗りあげた幸村様とは対照的に、毛利元就は名乗ることも宣戦布告に応える言葉もなく、ただ幸村様を見下ろしていた。
「愚かな・・・。武田の将、我は貴様に興味などない」
毛利は下に控えている者たちに合図を送り、「排除せよ」と変わらぬ調子の声で命じた。
幸村様たちと毛利軍の戦いが進み続ける要塞の上で始まった。
「この日ノ本は、貴殿や豊臣が統べるべきものとは思わぬ! 覚悟なされよ!」
要塞の上に乗ってしまっては毛利軍も刀で応戦するしかなく、幸村様の鍛えぬかれた槍の技の前に多くの兵が倒れていく。
毛利元就は、それを天台から眺めつつ、顔色ひとつ変えることはなかった。
「ほう、見上げた愚かさだ。まさに捨て駒よ」
さっきから幸村様を蔑む言葉ばかりを口にする毛利に怒りが募るばかりであったが、私はその場から動くことはできなかった。
幸村様が今までの何倍も頼もしく見え、圧倒されていたのだ。
鋭い槍筋は強い魂が込められていて、それは私が知っていた、私がお守りしていたとばかり思っていた幸村様のものではなかった。