第3章 幸村の想い
──すると日輪はおそらく気配に気付きながらも前進することをやめずに突進してきた。
いよいよ武田・薩摩軍と衝突するのである。
「な、なんだあれはっ・・・」
日輪は光を集めて、それを前方に現れた薩摩軍に照射したのである。
日の光を何重にも集め、それを一点に集中させて放つのだから、そこは相当の熱となるはずである。
薩摩の軍勢がどうにか避けきると、その土地は赤いヘドロとなって溶け出していた。
──その向こうから、幸村様が現れたのだ。
溶け果てた土地の向こうから、真っ直ぐに日輪へと騎馬隊とともに進んでいく。
「某は、真田源次郎幸村! 豊臣との卑劣なる駆け引きの戦と、味方の命を厭わぬ冷酷さ! 毛利元就、お館様と薩摩・島津殿の志を胸に、某がお相手致す!」
(幸村様っ・・・!)
幸村様の顔つきは、お館様が不在のときに見せた不安そうな表情でもなく、己の槍で人を殺めることの疑問でもなく、そして甲斐を発たれたときの疑うことを知らぬ晴れやかな表情でもなかった。
幾多の困難の先に見つけた、己のすべきこと。
ただ己の信ずる明日、そのために槍をふるう。
それを悟った、頼もしく勇ましい顔つきであった。