第3章 幸村の想い
「佐助、今はそのようなこと、某の邪念となることは申さずともっ・・・」
「こんなときだから言ってるんだよ、旦那。この薩摩への訪問で、旦那は見違えるほどに成長した。あの竜の旦那にだって勝負できるほどにね」
「・・・佐助、何が言いたいのか分からぬが、某の紫乃への想いをけしかけておるならば要らぬ世話にござる。紫乃の気持ちは分かっておろう。・・・政宗殿と共に過ごし、その人となりに惹かれていること、某とて気づいている。それに某は、一国を統べる政宗殿に追い付いてはおらぬ。・・・それを承知の上で、佐助も二人を取り持ったのだと解していたが」
政宗と紫乃をやたらに引き合わせようとしていた佐助の行動を咎めるとまではいかないが、ここへきてなぜか自分を激励し始めた佐助に、幸村は疑問を隠せなかった。
「ふっ、分かってないなぁ。俺は最初から旦那の味方のつもりだったよ。女ってのは強い男に惹かれるって単純なものじゃない。その時期や感情の機微で容易に結果は変わっていくからね。紫乃だって、一度竜の旦那を好きになったからってずっと変わらないなんて保証はない」
「・・・どういうことでござるか?」
「いかに女の心を揺るがすか、それが結果を変えることもあるってこと。今の旦那の真剣な想いを知れば、紫乃の心を揺るがすことは間違いない。その上で選んでもらえばいいじゃないの」
「・・・佐助、某は・・・」
「じっとしているだけじゃ何も得られりゃしない。今回の戦でそれはよく分かったでしょ?」
「・・・」
「多分、紫乃の性分だから、この任務が終わるまでは、独眼竜のものにはならないんじゃないかなぁ。ひっくり返すなら、今しかないと思うけど」
「・・・佐助。甲斐へ戻られよ。今はこの要塞を止めることのみ、それのみに集中致す」
「はいはい、了解」
佐助が逸れて去っていった後、幸村は気を持ち直して要塞を追った。