第3章 幸村の想い
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真田幸村は、安岐より大阪へ進撃を開始した毛利の要塞「日輪」を追っていた。
その所帯は武田のみならず、薩摩で得た軍勢を率いている。
豊臣への対抗策として薩摩と共闘すべきと講じてきた信玄の案を、幸村は己の迷いと困難を乗り越え、見事形にすることに成功したのであった。
騎馬隊に添い駆ける佐助は、そんな成長を遂げた幸村を頼もしく思いながら、各地で得た情報を伝え始めた。
「旦那、右目を取り戻した伊達は先回りして小田原へと向かってる。豊臣と決着をつけるつもりだ。上杉と九州も差し向けられた豊臣兵に対抗してる。大阪へは長曾我部が向かったはずだ」
「承知した。佐助、甲斐へ戻り、お館様に伝えよ。甲斐に据えて状況を見、上杉、あるいは伊達の危うきとき、援軍を送られたし。この要塞の進撃は、必ずや某が阻むことを約束致すと」
「・・・了解!」
さっそく甲斐へと戻ろうと道から逸れた佐助であったが、もう一度幸村の側へと添うと、ニヤリと笑って見せた。
「旦那。こんなときに何だけど、こんなときだから言っておくよ。紫乃は今、伊達から抜けてる」
「な・・・」
「こっちへ向かってるのかもね。この土壇場で、やっぱり旦那のことが恋しくなったのかもよ」
幸村は、意図の分からぬ紫乃の行動に対して勝手に予測を立てただけの佐助の言葉を、振り払うように顔を背けた。