第2章 右目を追う
──毒に犯されていた体は、もう末端までよく動くようになっていた。
飛行忍具を取り出して、今一度、伊達軍に別れを告げた。
「それじゃあ、私はもう行く。政宗殿、片倉殿! 必ずや豊臣を降し、日ノ本を守ると信じている!」
「紫乃、死ぬんじゃねーぞ! お前もデケェ要塞を片付けた後はさっさと戻って来い! さっきの続きはそのときだ!」
「っ・・・」
相変わらず周囲を気にせず恥ずかしいことばかり言う政宗殿だが、今はそんな彼に後ろ髪を引かれる思いでその場を発った。
(幸村様とともに戦い、そののちは、必ずやまた政宗殿のもとに・・・)
──そんなことを考えていた自分の甘さを、このときはまだ分かっていなかったのだ。
大切なものは、どちらも守ることなどできない。
片方を選べば片方を捨てねばならないと、このときの私には気づかなかった。
いや、気づかぬフリをしていたのだ。
片倉殿はそれを見抜いていたのだろう。
だからこうして私を揺さぶったのだ。
──私はこの後、自身がどんなに愚かであったか、思い知ることとなる。