第2章 右目を追う
「・・・政宗殿」
「お前が決めろ。確かにこれはどっちが死ぬかも分からねぇpartyだ」
「・・・」
政宗殿はそんなことをいいつつも、心の中では幸村様を選択することを禁じているように思えた。
強制力のある瞳だった。
目を閉じると、目の前にいる政宗殿の顔よりも、離れた場所でずっと奮闘されていた幸村様の姿が思い浮かんだ。
「・・・政宗殿。すまない。私は幸村様のもとへ行く」
「・・・そうかよ」
政宗殿が自分にとって大切なものになればなるほど、同じく幸村様のことも大切な主君だと思えてならなかった。
ここで政宗殿を選べば、なぜか、幸村様に見限られてしまう気さえした。
政宗殿のそばにいたいと願うことは、幸村様を、武田を遠ざけるということなのだ。
私は往生際の悪いことだが、幸村様を失うことも嫌だった。
「紫乃・・・」
「なんだよ紫乃、筆頭と一緒に行かねーのか?」
「紫乃さん、本当にそれでいいのか?」
私の決断を鈍らせるように伊達軍がけしかけてきたが、片倉殿はそれを諌めた。
「お前ぇら、紫乃にとっての郷は武田だ。一時の感情で主君を二度と見れねぇことなる、そんな後悔はさせたくねぇ」
片倉殿が私の恋心を「一時の感情」と表現したことに、政宗殿は怪訝な顔をした。
また、私も幸村様が死ぬ可能性を示唆されたことが辛かった。