第2章 右目を追う
「・・・紫乃、お前ぇんとこの猿飛には借りができた」
「そうか! 佐助様が片倉殿を助けたのだなっ・・・良かった・・・良かったっ・・・」
「俺は政宗様の背を狙ってきてやがる竹中を迎え討つ。・・・お前ぇはよく考えた方がいい」
「え?」
片倉殿が急に神妙な顔つきになったものだから、私もとりあえずそのような顔つきになって聞き返した。
政宗殿も片倉殿の言わんとすることに首を傾げている。
「どういうことだ、小十郎」
「・・・政宗様。猿飛から、真田率いる武田の騎馬隊は、じきに大阪へ向かう毛利の要塞を止めにかかる手はずになっていると聞いております。あの要塞を豊臣に奪われれば脅威となるゆえ・・・。もちろん政宗様と小田原へ行くべき道もありましょうが・・・」
「・・・こいつは真田幸村んとこへ行くべきだ、って言いてぇのか?」
「・・・紫乃にとって、真田は郷の主君にございます。この小十郎にとっての政宗様と同じ。あの大要塞を止めに行くというのは真田にとって、己の命、そして武田・薩摩で預かった幾多の命を掛けた策。もし、そこへ加勢したいと思うなら、此度は伊達と別行動をとってでも行くべきかと」
片倉殿はなぜそんなことを政宗殿に申し出たのか私には分からなかった。
しかし、政宗殿は少し神妙に考えて、考えて、そして私に判断を委ねるように視線を向けた。
幸村様が毛利の要塞に挑もうとしている。
それは薩摩との連合に成功し、お館様の先導ではなく幸村様自身のお力で軍を導いておられるということだ。
・・・そこへ加勢すべきか、伊達と小田原へ行くか。
きっとその判断を自分で下さなければ、後悔するのだ。
片倉殿は長年の経験から、それが分かっているのだろう。