第2章 右目を追う
「元親! 戦が片付いた後は会いに行くからな!」
「待ってるぜ紫乃! 慶次にも会ってやんな! この戦じゃ豊臣と一悶着あるらしいが、お前さんに会いたがってたぜ!」
「分かった! 達者でな!」
「紫乃もな! 仲良くやんなぁ!」
最後の仲良くというのは政宗殿とのことを指しているのだと分かったが、こうもすぐ隣にいるので気づかぬフリをした。
長曾我部軍が去った直後、伊達軍には少しの沈黙が走った。
例にもれず私も黙った。
正しくは、自分以外の者の話し出すのを待っていた。
片倉殿が戻ったことに対して、まずは皆、片倉殿か、あるいは政宗殿からその言葉を聞きたかったのだ。
先に口を開いたのは片倉殿だった。
「・・・政宗様。長らく留守にし、申し訳ございません。此度の失態、どんな罰をも受ける所存で・・・」
「そんなことはいい」
しかし政宗殿がそれを遮るには、表情を変えずとも、右目が戻ったことへの素直な言葉をしっかりとした声色でこう口にした。
「よく戻った」
政宗殿・・・。
そのときちょうど朝日がのぼり、我々は暖かい光に包まれていった。
それは片倉殿がいなかった間の空虚な冷たい空気から解放されていくように、伊達軍の皆は一斉に涙を流し始めた。