第2章 右目を追う
「長曾我部元親だな。大阪でお前の弔合戦が始まっている。すぐに行ってやれ」
「何ぃ?」
片倉殿は政宗殿と言葉を交わす前に、まずは大阪から持ち帰った用件をひとつずつ伝え始めた。
最初は大阪で捕らわれていた長曾我部軍の件。
城から逃れる際に彼らの脱出に手を貸したらしいが、どうやらそいつらは元親の仇を討とうと城へ攻めこんだというのだ。
「城でいくつか情報を得て、豊臣の策はあらかた分かった。毛利が奪った長曾我部の要塞、薩摩、上杉に向け、一気に軍を放ち総力戦に持ち込んだのち、小田原に据えて関東を潰す腹だ。背後にはもうあの竹中が迫っている」
「なるほどな。そろそろ決着をつけようってわけかい。独眼竜、俺は大阪へ向かうが、アンタはどうする?」
「ハッ、決まってんだろ。小田原で豊臣の野郎をぶっ潰す!」
大阪へ行く用事がなくなった伊達軍一行は、ここで長宗我部軍と道を別つこととなり、元親に半分の馬を分けて貸し付けた。
夜が明けようとしていた。
どの馬も二人乗りを余儀なくされたが、乗っている武人たちはさぞ満足そうであった。
それはこうして片倉殿が戻ったこと、長曾我部の捕虜たちが無事であると分かったこと、大阪と小田原、道は違えど、行く先に必ず目的のものがあるということ、それが彼らを希望で満たしたのだ。
「次会うときは海の上のpartyだ。死ぬんじゃねーぞ」
「おう、アンタも達者でな!」
やはり元親は政宗殿と気が合うと思っていた。
政宗殿において友情を深めるなどという概念はないかもしれないが、私の見る限り、彼はそれでも着実に他の武将と交わり、力を得るのだった。
それはきっと政宗殿の秘められた力だ。
そして私は彼のそんなところが、たまらなく好きだ。