第2章 右目を追う
「オイ、足開け。直接喰わせろ」
「は!? や、ややややや、だめだ! 政宗殿にそんなことさせられぬっ・・・! 嫌だやめろ!」
「うるせぇ、黙ってろ」
「やっ・・・」
政宗殿は私の足を割り、開いた状態を力ずくで固定した。
そこにだんだんと顔を近づけていくものだから、もう私は必死で、本当に必死で足を動かして逃れようと試みた。
「だ、だめっ・・・」
しかし力は入りきらず、彼の唇はさっそく私のそれに吸い付こうとしていた。
・・・ところがくっつく前に、背後から、私でも政宗殿でもない者の声がしたのだ。
「おーい、独眼竜、紫乃、戻ってきなー!」
・・・元親だ。
その声までまだ距離があるが、政宗殿はピタリと動きを止めた。
私はその隙にすぐに身体を離した。
「ま、政宗殿、まずいっ、あの声は元親だっ・・・」
「あの野郎っ・・・来んなっつっただろーがっ・・・」
「と、とりあえず離れろ! 見られてしまう!」
「フザけんな! 俺はやめねーぞ、ここで止められるわけねーだろ!」
「何言ってるんだ! 止めろ!」
また私に覆い被さってことを進めようとする政宗殿の頭を、全身全霊の力を込めて押し戻した。
そんなことをやっていると、元親がこの茂みへやってきた。
「・・・何やってんだ? アンタら。ちちくりあってんのかと思ってたが、痴話喧嘩か?」
たしかにこの力ずくの取っ組み合いだけを切り取れば、なるほど喧嘩をしているように見えた。
「あ、ああ! ちょっとな! で、どうしたのだ元親! 何か用か!?」
「おう、早くこっち戻りな、驚くぜ」
「テメェ、そりゃどんなニュースだか知らねえが、俺たちを中断させやがるほどのモンなんだろうな!?」
「おう!・・・て、やっぱりちちくりあってたんじゃねーか!」