第1章 生きてみせろ
念の精孔を開き、能力を使えるようにする方法は2つ。
ムリヤリ起こすか、ゆっくり起こすか。
クロロは自身のオーラを送り込むことによって、赤子の精孔をムリヤリこじ開けたのだ。
通常ゆっくり時間をかけて開けるべき精孔を、一瞬にしてこじ開ける・・・
格闘・武術の心得がある成人に行っても「外法」と呼ばれる方法を、クロロは産まれたばかりの赤子に施した。
(これで駄目だったら、この方法は諦めるか)
しかも、コレが初めてではない。
何人試したか、5例目からは数えてもいない。
発を行った瞬間、バラバラの肉片に変わった赤子もあれば、オーラを出し尽くしてミイラ状態になった赤子もあった。
「おぎゃー!おぎゃー!」
「…………」
(母親が能力者だと判明している、という点。
そこが今までの赤ん坊とは違う)
わずかな期待を残して、クロロは赤子を至近距離から凝視し続ける。
かれこれ1時間ーー・・・
赤子は休まず泣き続け、身体から立ち昇るオーラは徐々に弱まってきている。
何度も見ている光景だが、このまま更に小1時間ほど放っておけば、オーラを出し切って死に至る。
「おぎゃぁ、おぎゃぁ」
「・・・・・」
クロロはふーっと大きな溜息をついて、屈めていた身体を伸ばし立ち上がった。
(また失敗か)
足下で両手両足を丸めて泣いている赤子を見下ろし、至極理不尽なセリフを吐く。
赤子が言葉を解せば、怒り出すであろうセリフだ。
「どいつもこいつも、何故こんな簡単なことが出来ないんだ?」
そう言って、何気なく纏を行った。
すると、
ピタと赤子の泣き声が止まった。
「なんだ?泣き疲れたか」
顔を向けると、そこには
ぽかり、と目を開けた赤ん坊がクロロを見ていた。
じっ……と、まるで探るような瞳には
あり得ないことだが、知性を感じさせる色があった。