第1章 生きてみせろ
おぎゃー!おぎゃー!
「何者だ、あの女」
しかし断末魔だと思い込んでいたのが、新しい命の産みの苦しみだったとは………
出産に立ち会った(?)のは初めてとはいえ、世の中はまだまだ未知に溢れているものだ。
おぎゃー!おぎゃー!
(………うるさいな)
泣き続ける赤子に軽く舌打ちをし、クロロは大股で小さな身体を乗り越えた。
こんなモノに関わっている時が惜しい、そう言わんばかりの非情さでその場を離れる。
しかしーー・・・
ハタ、と歩みを止めた。
(………待てよ)
今現在、抱えている頼まれ事を思い出したのだ。
「念能力者の開発、育成の効率化を図りたい」
1月程前、この街の長老達はクロロを呼び出して、そんなコトを言い出した。
その能力如何に関わらず、念能力者には常人以上の戦力・働きが期待できる。
だが、公式には無人とされている流星街にあって、能力者の確保は言うほど簡単ではない。
念は誰でも習得できるものではあるが、通常は習得まで時間がかかる。
「そこを何とかならないか?」
と無茶ブリしてきたのだ。
ーー・・・あらゆる方法を試した。
1対1で教えるべきところを2対1、教え手を増やす、という穏当な方法から
脳の第6感を司る部位にメスを入れる、という不穏当な方法まで。
だが、今のところ劇的な成果を上げた方法はなかった。
おぎゃー!おぎゃー!おぎゃー!
かしましい泣き声を背に、クロロは自身の口元を手で隠す。
おぎゃー!おぎゃー!おぎゃー!
「ちょうどイイ」
ーー・・・赤子を見て、思い出した方法がある。