第1章 生きてみせろ
(血の匂いがするな)
敵意がないのをいいことに放置した女は、クロロが座るゴミ山の裏に消えた。
しばらくすると、女の苦しそうな息遣いとうめき声、断続的にゴミが崩れる音が聞こえてきた。
円をするまでもない程、騒々しい。
(………場所を変えるか)
うめき声と共に、風が血の匂いを運んでくる段になり、クロロはゴミ山を降りた。
「ーーーーーっ!ーー!!」
音もなく地上に降り立ったとき、女が一際高く鳴いた。
断末魔か、と無感動に思うでもなくこの場所を離れようと足を進める。
右に曲がってゴミ山の後ろを通り、ひとつ女の死体を跨いで行くことなる、
ハズだった。
「おぎゃー!おぎゃー!おぎゃー!」
「!!」
そこに死体はなかった。
かろうじて、という風情ではあるが生きた女が1人うずくまっていた。
そして…………
「おぎゃー!おぎゃー!」
女の足下には、赤子がいた。