第2章 蜘蛛の巣
「「………」」
ホームの惨状を目の当たりにして、マチとパクノダの2人は絶句した。
暖かい家庭に帰って来る訳じゃナシ。
元々が廃墟なのだから、散らかっているのが常の場所だ。だが、こんなにも物が散乱していたことは……未だかつて記憶にない。
「……泥棒でも入ったかしら」
「そんな命知らずいないだろ。
いたとしたら、そいつは何を盗んだって?」
パクノダの呟きに、マチは床に転がる真っ赤な石を爪先で触る。2~3ヵ月前にどこぞの博物館から盗んできたルビーの原石だ。売り払えばプール付きの豪邸が買えるだろう。
「そうね、じゃあココにだけ台風でも来たのかしら」
そう言って、パクノダは床に落ちている黒のロングコートを拾う。このコートはクロロのものだ。
「そう言えば、団長は何処に?
自分の仕事は早々に終わらせたらしいじゃない」
「………シッ」
居間、と団員が呼んでいるスペースの中央辺りまで進んだところで、パクノダがマチの動きを制止した。
ガシャン、ガラガラ……
「ーーー、ーー」
階段を上がった奥の部屋から、物音と人の声が聞こえる。今の今まで気配も何もなかったのに。
「今の……」
「団長の声ね」
2人は顔を見合わせ、散乱する刀の鍔(ノブナガのコレクション)やマニアックなPC周辺機器(シャルの仕事道具)を避けながら階段の手摺に手を置いた。
(……敵か?
絶をして団長が相手にしてるんだろ)
(分からない。急ぎましょう)
頷き合う2人は同時に地を蹴る。20段以上ある階段を、わずか2歩。音もなく駆け上がると、気配を感じる部屋の扉に取りついた。ここはクロロの書庫だ。
バサッ……!
「……っ、やめろ!」
((!))
焦燥が滲むクロロの声に、マチが扉を蹴り飛ばす。
バキャ…ッ‼
扉が蝶番ごと部屋の中へ弾け、その破片が床に着く前にマチは部屋の中に入った。一方パクノダは不測の事態に備え、部屋の外から中を窺う。
しかしー……
「「 ⁉ 」」
予想外の光景に、マチとパクノダは目を見開いた。