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彼岸花を抱いて

第10章 新米探偵に依頼あり





「智晃。彼が言っていた私の仲間です」



漸く紹介されると智晃は立ち上り男の前に出て、手を差し出した



智晃
「俺、河野智晃。宜しく」


「…………」



だが、その差し出した手を握られる事も名乗り返される事もなく、じっと智晃を見詰める…というより睨んでいると言った方がしっくりくる程に彼へ冷ややかな視線を男は送っていた



智晃
「えっと…?」


「こら、凉晴。しっかり挨拶してください。これから一緒に行動するんですよ?」



智晃が戸惑っていると見守っていた凛が冷めた男を見上げながら柔らかく叱った




「凉晴(スズハル)だ。…………宜しく」



凉晴と名乗った男は仕方なく、とばかりに顔を軽く逸らしながら智晃の手を握り返したがその手はすぐに離された


智晃
(何か俺…既に嫌われてるっぽいのは何でだ…?)




「さて、挨拶も済んだ事ですしこれ…」



─ガチャ




凛が言葉を全て言い終える前に事務所の扉が開き、僅かな隙間から女性が控え目に顔を覗かせた


女性
「あ、あの…さっき貼り紙を見て…。此処ですよね?探偵事務所って…」


「はい、そうですよ。入ってください?」



ぱっと花が咲いたような笑みを浮かべながら凛が顔を覗かせている女性へ中に入るよう促すと、小さくお辞儀をしてから室内へ脚を踏み入れた。








智晃
「友人が消えた?」



ソファに腰掛けて話を聞くと、彼女…渡會(ワタライ)の友人がある日を境に姿を消したと言うのだ。
その話を聞いた智晃の言葉に渡會は頷いた



凉晴
「家出じゃないんですか」

渡會
「そんな筈ないです…!」



智晃と凛が腰掛けているソファの背凭れの角に軽く腰を預けて腕を組んでいた凉晴の言葉に渡會は僅かに身を乗り出して否定をした




「そう思う理由があるのですか?」

渡會
「彼女…家族とも仲良かったですし毎日、楽しそうに日々ある事を話してくれるんです。彼女の周りにはいつも人が居て幸せそうでした」



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