第9章 彼等が生きた証
私は貴方を抱いて、意識を集中させ急いで託す場所を探しました。
そして、視えたのが……河野夫婦でした。
それから私は貴方がスピネル族である事を隠すために本来の力に蓋をして、子供が出来なかった河野夫婦に託すために下へ降りたんです。
凛
「貴方がたに頼みたい事があります。…今、上では戦争が起こっています。この子は今前線で戦っている彼等の生きた証。時が来たら迎えに来ます。…だから、その時まで彼に沢山の愛情を持ち大切にしてください。お願いします」
母
「生きた証…?」
凛
「はい。…前線で戦っているスピネル族の子です。今スピネル族を全滅させるための戦争が起こっているんです。……その子だけはと、彼等が一番守りたいものです」
父
「全滅させるための…戦争」
凛
「今はあまり話している時間がないんです。…この子を…智晃をお願いします」
突然のお願いでした。
それなのに、彼等は慌てる事なくとても落ち着いていて…すぐに貴方を抱いてくれました。
母
「貴方が迎えに来るその時まで…いえ、その時が過ぎても彼を大切に想います」
父
「嗚呼、任せてください」
彼等に任せて良かったと、思いました。
それから私は、急いで上へと戻りました。
智晃 父
「凛!」
凛
「智晃は無事です。…とても良い方達に出会えました」
智晃 母
「そう。良かったわ…」
貴方の無事を聞いて彼等は安堵していました。
スピネル族の疲労も凄かったですが、他種族の疲労もかなりのものでした…戦闘部族だけあり強さは本物です。
でも…
彼等も無敵ではありません。
一人二人と…倒れていきました。私も彼等を守るために戦いましたが、流石に人数が多すぎて完璧に守る事は出来ませんでした。
出来なかったんです…彼等を…守る事が。