第6章 祝いと別れ
智晃
「春太…?」
智晃の唇から溢れた声は頼りなく響く
福留
「今まで良くやってくれたね──…高遠くん」
春太
「………っ」
智晃
「何…言ってんだ?」
【智晃 side】
心臓が痛い。
早く打つ心臓が何かを伝え、何かを拒むような感覚がして誰も…口を開くな、と問い掛けておいて思う
福留
「高遠くんはね…」
やめろ
福留
「君の────…」
やめてくれ…!
福留
「────────……友達じゃない」
違う…そんなわけ、ねぇ…!
福留
「そして俺は………君が…───邪魔だ」
掌を俺に向けているのは分かってる。
けど、身体が動かねぇ…
音も聞こえない…何も
春太
「智晃…‼」
その声だけが鮮明に聞こえた。
気が付くと俺は地面に倒れていて隣には凛もいる
そして、俺達に覆い被さる春太が…いた
智晃
「はる、た…」
春太
「俺、…」
凛
「お話は後です。…ここを乗りきらなくては…」
凛の冷静な声に俺達は、はっとして身体を起こし福留をしっかりと見る
凛
(気をとられて間に合いませんでした…私はまた…)
福留
「君は俺も裏切るんだね」
凛
「………いい加減にしてください」
福留
「何…?」
珍しく怒気を含む凛とした声に空気が更に張り詰めるのを俺は肌で感じる
凛
「智晃の事、春太の事…何も知らないのに決め付けた言い方をしないでください。私は彼等と関わった期間はそんなに長くないです。でも、ちゃんとお二人は─…お友達ですよ、とても素敵な」
春太
「凛ちゃん…」