第6章 祝いと別れ
智晃
「おら、とっとと帰んぞ」
春太
「嫌だー、帰んねぇぞ」
智晃
「何でだよ」
春太
「俺も泊まってくー」
智晃
「弟が待ってんだろ。立てって」
机に突っ伏せながら駄々をこねる春太の肩を智晃は何度も揺さぶる
春太
「くそー…」
智晃
「ほら、凛だって送んなきゃなんねぇし」
春太
「はっ…そうだ!よし、帰ろう!」
“凛”の名前を出すと春太は重かった腰を素早く持ち上げた
それに対して大きく溜め息を溢す智晃と楽しそうに笑っている凛と両親も春太につられて立ち上がり、そのまま玄関へ向かう。
凛
「ご飯、美味しかったです」
母
「良かった。いつでも食べに来てね」
凛
「はい。ありがとうございます」
春太
「また来るなー。おじさん、おばさん」
父
「ああ、待ってるよ」
智晃
「んじゃ行くぞ」
智晃の言葉に頷いて二人は手を振る両親に見送られて家を出た。
影が溶け込むくらい闇が深くなった街を三人で会話をしながら肩を並べて歩いていく
春太
「夜はまだ涼しいなぁ」
凛
「昼間は少し暖かくなってきましたよね」
智晃
「ちょい暑くね?」
凛
「そうですか?」
春太
「凛ちゃんは体温、低めだから暖かく感じんのかもなぁ」
凛
「そういうものですか?」
春太
「え、違う?」
互いに疑問符を浮かべて顔を合わせると面白くなって吹き出す二人を見て、智晃は何かを噛み締めるように微笑んでいた
智晃
(良いな、こういうの…)