第1章 願いをこめて
あれから脚を止めずに走っていると智晃が通う
炯然学園の姿が見えてきて智晃は更に速度を上げた。
「ギリギリだったなぁ、智晃!」
席に着くのと同時に後ろから衝撃と共に声が掛けられる。
智晃
「いってぇよ…」
「おーわりわり。けど、間に合って良かったなぁ」
智晃
「まぁな」
八重歯を覗かせながら笑う智晃の唯一の友人である高遠 春太(タカトウ ハルタ)に言葉を返して苦笑する。
それから智晃と春太が他愛ない会話をしていると教室の扉をガラガラと音をたてて
髪が少しもじゃっとした、Yシャツに水色のカーディガンを羽織った細身で長身の男性担任が入ってきて、智晃の姿を見付けると優しげな顔には似合わない表情で口元を歪めた。