第4章 安定と初陣
ディア
「…くっは……ちょっと、舐めすぎたみたい」
木に叩き付けられたディアがふらふらと立ち上り口の端に流れた血を親指で拭き取る
ディア
「まだクラクラするけど…やられっぱなしは気に食わないの!」
ディアは地面を思い切り蹴り距離を縮める
智晃
「間に合わ…っ」
防御するよりも先に回ったディアの踵が智晃の脇腹にのめり込むも、苦痛に耐えながらその脚を智晃は両手で掴みそのまま投げ飛ばした
ディア
「あっ…!」
智晃
「お、俺戦えてんじゃん…!」
その言葉にディアの表情が変わる
ディア
「調子に…乗らないで!!」
綺麗だったディアの顔は怒りに歪んでいた。
地面を再び蹴り智晃との距離を縮める
智晃
(今度こそ防御を…っ)
だが、智晃の近くに一度着地して素早い動きで背後に回っていた
智晃
「なっ…!」
振り向くよりも先にディアの蹴りが背中に抉り込むように入っていた
智晃が呻くより早く彼に飛び掛かり、地面にうつ伏せになっている智晃の髪をディアが掴み顔を上げさせる
ディア
「さっき、あたしの顔に膝入れてた…よね!」
彼女は膝ではなく肘で思い切り智晃の頬を殴り付けた
智晃
「が…はっ…」
頬を殴られた衝撃で智晃の身体は仰向けになる
ディア
「あたしと戦えてるって?あははっ…何それ」
ディアの高い笑い声が夜の森へ響く。
髪を掻き上げながら立ったディアが、智晃を上から見下ろす
ディア
「これくらいで動けなくなってるくせに!」
智晃
「うぁ…!」
相当、頭に血が上っているようで先程までの楽しそうな声音ではなく苛立ちをぶつけるような声を発しながら、智晃の脇腹を蹴ったり腹部を踏みつけたりする