第3章 謎の特訓…と、遭遇
智晃
「あー…凛わりぃんだけど」
言いにくそうにするので理解した凛は、顔を向けずにドライヤーへ人差し指を向け
凛
「キレニア」
電源等をつける際の呪文を詠唱すると、ドライヤーがぶおっと音と共に温風を吐き出す
智晃はまだ自分の魔法に自信がないらしく凛に頼んだのだ。
それから、温風を彼女の頭にあてつつ智晃の細くも男性らしい手が凛の柔らかく艶のある髪を丁寧に乾かしていく。
父と母はそんな二人を微笑ましそうに見詰めていた
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凛
「本当にお世話になりました。とても良くしていただいて、ありがとうございます」
母
「いえいえ。いつでもいらっしゃい」
父
「またおじさんと話をしよう」
凛
「はい。とても楽しかったです」
智晃
「んじゃ、送ってくっから」
父
「ちゃんと送るんだぞ」
智晃
「分かってるっつーの」
玄関先で賑やかに会話をしてから、智晃と凛は歩きだした
智晃
「今日、休日なんだしもう少しゆっくりしてから帰っても良かったんじゃねーか?」
凛
「いえ、あまりご迷惑は掛けられませんので」
智晃
「別に迷惑じゃねーって」
凛
「ふふ、ありがとうございます」
暫く歩いていると大きな広場が現れ、その中心に白を基調とした噴水があり良く待ち合わせをする人達の目印として使われている
すると、凛が噴水の方をじっと見ているので不思議に思った智晃がその視線を辿ると
智晃
「ジェラート?」
赤い屋根がついた移動販売車がジェラートを売っていて、その前には大人も子供も集まり自分の好みのジェラートを楽しんでいた。
この地域では珍しいものではない光景だった